記憶喪失になったぼくが見た世界 坪倉優介

どうも、メケです。

 

この本を知ったのはTVです。

本人がTV出演していて、記憶喪失になってから今までのエピソード(笑い話的)に語っているシーンを見たのがきっかけです。

このTV番組内で印象に残ったのが「この白く光るたくさんの粒粒は何だ?」「白い煙が出ている」「自分が今感じているこの感情、でもこれを言葉で何と言っていいのかわからない」「ご飯って白く光る粒粒のことだけを言うんじゃないんだ」・・・・、などなど。

赤ちゃんが大きくなっていくとき、きっとそういう感動や驚きの連続のなかで成長しているんだろうな。もっと詳しく、この人のこと知りたいと思ったのがきっかけです。

 

本書の感想

最初は読んでてやきもきしましたが、読み終わった後はとても心がほのぼのとしたような、心あったまる感じがしました。

 

話の出だしは事故にあって記憶喪失から徐々に立ち上がっていくストーリーなので、何もかもわからないことがここまで「不気味なのか」と思わされます。

 

記憶喪失

 

記憶喪失での家庭での初体験は、まるで「突然地球に降り立った宇宙人」が「人間という生き物の生活様式」を言葉もわからず異様な光景に目に映りつつ体験し、学び、人間らしくなっていく過程を見ているようでした。多分、赤ちゃんはそうやって大きくなっていくんだろうな。

 

家の外ではさらに困難が・・・。自分が過去の記憶がないとここまで生きづらいのかと実感させられます。

あたたかく見守ってくれる親や兄弟がいてくれる家庭が坪倉さんの心のよりどころとなっていたのがほっとできました。世間の荒なみも温かく見守ってくれている家族があったことが読んでて安心感がありました。

 

本人が経験したエピソードと、母親目線でその時々の振り返りも並走して書かれていたので読んでて臨場感があります。坪倉さん本人の感情と親的な子育て目線で読めます。

 

自分の名前と住所しか言えないほぼほぼ全記憶喪失状態。簡単に言えば「赤ちゃんが成長していく過程をたどっていく」に近いのですがそれを数年で「赤ちゃんから大人まで」をやっています。しかもいきなり大学生活から始めるという、すごさ。 

 

途中、すべて記憶がないということが「人は無意識にすべてのバックグラウンドの中で生きているのだ」と実感するシーンがたくさんありました。と同時に、誰も自分の気持ちを理解してくれない孤独感と自分だけ過去の自分を知らないという気持ち悪さも、読んでてこちらまでもどかしく思いました。

 

人が世界を認識していくプロセスを垣間見れたような気がします。

大学で幼児からスタートですよ。授業は宇宙語、板書は外国語でしょ。本人は大変苦労されたんじゃないかと思いますよ。当然周囲やご家族の方も。

 

そして、この本の最後にとても印象的だったのは「新しい自分の記憶がなくなってしまうことが怖いです」という言葉。とても大切な経験といい思い出がいっぱい詰まった、「新しい過去がいとおしい」と。 記憶喪失直後の苦悩から立ち直って過去にしがみつくのではなく、新しい自分とともに前を向いて歩きだしていることがとても印象的でした。

 

 どういう人向けな本?

言葉の表現がとても感性があってよかったです。小中学生の読書感想文向けな本ですねー。

「人が人になる」ということはどういうことか興味のある人向け。

人が触覚、味覚などの五感と言葉の概念をどうやって獲得していくのが興味ある人向け。

認識というプロセスに興味ある人向け。

 

ざっくりとストーリー

1989年大阪芸術大学に入学した6月に、バイク事故で記憶喪失になる。

病院で生死をさまよい、奇跡的に昏睡状態から目覚める。

自分の名前と住所は言える。それだけ。目に見えてはいる世界が、それが何なのかわからない。言葉も聞こえるだけでそれが何なのかわからない。

自分が何かもよくわからない。

 

まるで赤ちゃんが成長していく過程をたどるように、すべて一から学び直す。

そんな状態から、過去の自分を思い出そうとするが思い出せず悩み苦しみながら、最後には新しい自分(記憶)をいとおしく思えるほどたくましく成長していくリアルノンフィクション。

 

さいごに

いやー、この本、最後ハッピーエンドなのがいいですね。

こころがほのぼのとした状態で読み終えられます。

 

坪倉優介さん今は染物工房をされてるらしいですよ。

TVでは、ご本人はとても穏やかで、少年の心を持った素朴な方に見えました。

この本もとても後味のいい本でした。

ごちそうさまでした。

 

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