クライマーズ・ハイ 横山秀夫

どうも、メケです。

 

この本読んだ正直な感想

めちゃくちゃ大切な勝負どころで煮え切らない主人公「悠木」、一大スクープ報道のチャンスを逃がす。それでいて新聞社内での権力争いには「激昂」して引かない。味方になりたいけど、私自身読んでて「悠木」の味方になりきれないというか、読んでて複雑でした。

 

相撲で例えるなら、強引にいい線(土俵際)まで押し込むのに最後寄り切れないというか、土壇場で相手にうっちゃられて、同体でビデオ判定にもつれ込み、体(たい)は死んでましたので「悠木」の負けでーす、みたいな・・・。それでいて結構「あーだこうだとうんちくを語る」。「えー」という感じでなんとも後味がわるい(前半は・・・)。

 

なぜなら、あれだけいい感じで全権デスクの要員をうまく配置して動かし、周辺部署ともケンカ腰ではあったけど「悠木」は日航機墜落事故原因のスクープをあとは刷るだけだった(うまく腰を落として引きつけて土俵際まで追い詰めていた)から。すべて盤石かと思いきや「大どんでん返し」、印刷しなかったのだ。翌日、他社新聞社に同じ内容のスクープを抜かれた。そして色々あって「悠木」は野に下った。

 

僕はてっきり日航機墜落の事故原因のスクープを世界で一番最初に報じるのかと期待して読んでしまいました。主人公「悠木」が新聞社内の販売部、整理部、社会部などの他部署の人間と熱くバトルし(やり合い)ながら編集部の全権デスクという大役を果たし、成り上がっていくのかと勝手に想像していました。登山になぞらえたクライマーズ・ハイのように一気に社内を駆け上がっていくのかと思っていました。

 

違うんです。クライマーズ・ハイが一気に解ける瞬間の恐怖心を、日航機墜落事故原因という大スクープを報じるだけという土壇場になってこの「悠木」も恐怖心が襲ったんでしょうね。クライマーズ・ハイが解けたんじゃないかと思います。きっとこの著者は登山家のクライマーズ・ハイと史上最大規模の航空機墜落事故原因を報じる大スクープを目前にしたときの、一記者のクライマーズ・ハイをかけたんじゃないでしょうか。

 

そのあとの悠木が安西のせがれ、燐太郎と「ついたて岩」を登るシーンはよかったです。そして最後まで読んだなら、もう一度最初から読み直してほしいです。この2回目の「悠木」の回想はめちゃくちゃ胸が熱くなります。1回は悠木の背景がわからないので今ひとつですが、最後まで読んだあとにもう一度読むとこの本は味わいが深いです。

私2回ほど車運転しながら泣きました。Audeibleなので・・・。車で聞いてるんです。

 

この小説の主軸は「全権デスク悠木」のクライマーズ・ハイ

登頂目前でクライマーズ・ハイが解けて一歩も足が動かなくなることがある。

日航機墜落事故原因を報じる一大スクープをあとは刷るだけというところで、クライマーズ・ハイが解けたように「悠木」は何もできなかった。おそらくこの小説の主軸はコレ。

 

この主軸に交差するように「悠木」の育った環境からくる人間性が昭和っぽい濃さで他の人々と絡まり影響されていくような・・・・。怒号はすごかったです。

 

おもしろかったか?

最後は北関新聞社の本社編集部を下野し、支社草津で地方記事を書きつつハッピーエンド。

部分部分はおもしろかったが、トータルでどっちつかずな印象。

山、登山家、新聞社の内情が臨場感あり表現そのものは面白かった。ノンフィクションなのかな? かなりリアルに臨場感よく書かれていました。この点は読んでて面白かったです。

 

この本は2004年に「本屋大賞」を受賞していたのでその先入観で読むとちょっと期待が大きすぎるかなといった感じです。でもカラッとしたスパイシーな一冊でした。

 

この本のタイトル、私がつけるなら・・

「クライマーズ・ハイが解けたとき」かな。でもこれだと読む前からネタバレですもんね。

 

安西さんには植物状態のままじゃなく、復活して販売部の部長を引っ掻き回してほしかった。

安西と悠木で日航機墜落のスクープを連発して天下を取ってほしかった。

 

ざっくりとストーリー

 出だしは60代の男性「悠木」が安西の息子と「ついたて岩」を登るシーンから始まります。40代のころ新聞社で「悠木」が御巣鷹山の日航機墜落事故の全権デスクを担当していた回想と、一緒に登っている男性の父親「安西」との回想が折り混ざりながら話は進んでいきます。

本筋は終始60代の悠木が「ついたて岩」に安西の息子とトライしている中での回想です。「悠木」は日航機墜落事故原因の一大スクープを目前で取り逃がし、部下たちの信頼を失い、新聞社内での権力争いに負けて下野します。そして、60代「ついたて岩」登山中にクライマーズ・ハイが解けて一歩も動けなくなる。そして滑落かと思いきや、安西の息子と繋いだザイルによって命拾いして、なんとか今度は「ついたて岩」を登り切るという話です。

 

しびれたセリフ

安西の「降りるために登る」。

安西は名クライマーだった。一緒に登っていたペア(チョモランマの登山スタッフになるほどの腕前)を「ついたて岩」で安西の落石事故によって亡くす。そして安西は、もう二度と山に登らないことを誓う。そのことを「悠木」は安西が植物状態になってから知ることになる。

なぜ、安西はズブの素人同然の悠木を「ついたて岩」に誘ったのか。そこが知りたかった。

安西はもう一度「悠木」を連れて「ついたて岩」をちゃんと降りたかったんじゃないだろうか。

 

日航機墜落事故から20数年後の現在に話は戻る。「悠木」の生い立ちに似た同じ匂いのする「安西」、その安西の残したせがれ「安西燐太郎」と「悠木」は「ついたて岩」を登る。しかし「悠木」は滑落寸前のところを燐太郎の打ったザイルによって救われる。

 

深い。

安西のせがれ燐太郎と悠木はちゃんと山を降りたのだ。

 

登山では悠木はクライマーズ・ハイが解けたけあともアンザイレンのお陰でちゃんと「山を降りられた」わけだ。新聞社の方でも日航機墜落事故の全権デスクになったものの、一大スクープを逃し部下の信頼を失うなど色々あったけども、草津支社へ下野できた。

 

「クライマーズ・ハイが解けたとき」といった感じじゃないだろうか。

 

まとめ

というわけで、本日は横山さんの長編小説「クライマーズ・ハイ」のレビューでした。

なんとなく「悠木」の煮えきらなさにイライラしつつも楽しめた一冊だったです。

ごちそうさまでした。

 

いつも最後まで読んで下さいましてありがとうございます。

 

そんじゃぁまたね。

 

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事