ハヤブサ消防団 池井戸潤

どうも、メケです。

今回は池井戸潤さんの小説です。

池井戸潤さんというと、下町ロケット、空飛ぶタイヤ、半沢直樹シリーズで有名です。

とはいえ、私、池井戸さんの小説読むのは初めてです。

 

ハヤブサ消防団、おもしろかったです。

ハッピーエンドでした。エンタメ的に十分おもしろかったです。

主役が事件解決していくというシンプルにして最強のミステリーストーリー。

 

今年夏にドラマ化されます。なので結末とか知りたくない方はこの先読まない方がいいです。

ネタバレありです。

 

さわりと感想

三間太郎は東京生活に見切りをつけてハヤブサ地区へ移住してきた。

ハヤブサは父方野々山勝男の実家のあったところ。

太郎にとってハヤブサは縁もゆかりもない土地ではないのだ。

東京では明智小五郎賞を受賞するもその後パッとしないミステリー作家生活を送っていた。心機一転ハヤブサ地区へ移住し、自然あふれる山里でのんびりと小説を書いていた。

地元ハヤブサの人に誘われて消防団に入隊。年間の行事やそこでかかわる人々との中でその地の人々や風習、食生活になじんでいった。

 

そんな時に事件は起こる。

他殺か自殺か原因不明の遺体が上がったり、出火元不明の火事が相次ぐ。

ハヤブサ消防団員として現場で活動していく中で、三間太郎の名推理がさえわたる。

 

事件は解決に向かっていくかに思われるが、新しい事実が浮かび上がるたびに謎が謎を呼び、太郎の推理は二転三転する。

犯人はハヤブサ地区(身近なところ)にいる。

今こうして話している相手が内通者かも。

どこから話がリークしているのか、太郎側の動きが筒抜けに。その間にも放火や殺人が次々起こる。警察は動かない。

そしてとうとう太郎の命が狙われることに・・・。

 

構図はシンプルですが、謎が謎を呼び、事件は起こり続け、リーク元不明。

正直みんな犯人に見えてきます💦 どんどん小説に引き込まれていきました。

 

そして、この小説のいいところが「のどかで何となく明るい」ところ。

古き良き日本の山里を連想させ、牧歌的な風景を思い起こさせます。

この小説の舞台は、山里の八百万町ハヤブサ地区。方言からして中部地方っぽい。

池井戸さんの表現は穏やかでとてもほのぼのします。こういうの好きです。

 

キャラクターのクセが強い!

 登場人物のキャラがはっきりしていたので分かりやすかったです。

 

勘介はボク好きなキャラ

人懐っこい。おっちょこちょい。太郎と仲がいい。この二人いいコンビ。

太郎が話した放火事件の推理を簡単に他の人に話してしまう勘介。確たる証拠もないままに。この勘介の口の軽さのおかげで、太郎は「思わず」事件の真相に踏み込んでいけたりもする。

 

太朗と勘介が郵便局長の吉田夏夫と3人で獅子鍋を食っている時のことなんだけどね。

勘介が太朗の推理について夏夫に口をすべらしてしまった。太郎が「ならば・・・」とズバリ事件の真相に迫る。証拠はないけどね。名推理と状況証拠で。

「犯人を絶対に追い詰めてやる」「人の幸せを奪う人は絶対に許さない」って太朗は夏夫の目の前で言っちゃったんだね。太郎は夏夫は浩信をやった「黒(ホシ)」だと思ってたから。

「犯人はお前だろ」って夏夫はそういわれてるようにしか聞こえなかった。夏夫は血相を変えて居酒屋サンカクをあとにした。

ココから事件は急展開し始める。

おもしろかったよ。

 

今にして思えば、夏夫はオルビスの信者だったんだね。夏夫の家の焼け跡からロレーヌの十字架を抱くマリア像が発見されたから。オルビス十字軍の実行部隊の一人だったかもしれない。

 

賢作と立木彩は好きだなぁ

二人とも格好いい。この二人がいると話が締まる。

TVドラマ化されるときの配役が楽しみ。

 

立木彩 事件を惑わす キーマン

立木彩はどんな女優さんがなるのかな。僕的には美人ですらっとした人がいいな。そして「闇」を感じる人。

立木彩は東京から移住てきた。ハヤブサ地区に縁もゆかりもない映像クリエイター。

そもそもその設定からして怪しいよね。もしかして犯人の一人?なんて思いながら読んでいました。

最後まで謎めいてましたね。小説の中で太郎とできちゃうのかと思いましたよ。そんなことなかったですけどね。

 

山原賢作 事件解決に貢献 キーマン

賢作は山の似合うワイルド系な役者がいいな。

そしてあの信岡町長とタメ口で互角に派手にやりあえる俳優がいいな。

消防操法大会や八百万のツチノコ探しのシーンで信岡町長をぴしゃりと言って切って捨てるところ、男らしかった。

 

事件のカギを握るキーマン、信岡町長と江西和尚

信岡信蔵 

先ほども信岡町長の話ししたけど、賢作と信岡町長はいとこ同士。小説の中盤頃にこの話が出てくる。共通のおじいさんは「山原本家」だったのだ。

賢作は本家が途絶えてから信岡町長との付き合いはないと言っていた。

この小説の謎を解くときの大きなヒントだわ。

「山原家」、「家紋」と「ロレーヌの十字架」。

信岡町長は子供の頃、「山原」を出て母方の信岡家に引き取られることになる。過去がすごすぎる。その時妹も一緒だった。なのに今、妹はいない。妹は何処へ。

 

信岡町長はリアクションが派手だからすぐに伏線とわかる。

町議会でタウンソーラーを推進していたのに、山売却を断ったために自宅を放火されてしまう。

タウンソーラーが放火に関わっているのでは?と太郎が信岡に聞くと、逆上する。

普通に考えると、タウンソーラーを疑うはずなのに逆にかばおうとするなんて。

「んな訳ねーだろ?」って、すぐわかるような伏線を張っている。ここで信岡町長に何かあるのか?って思っちゃう。あったんだね、これが・・・。今思えば「妹」繋がりだったんだなぁ。

  

江西佑空(えにしたすく)

江西和尚。隋明寺住職。後半から登場する。

一度最後まで読んで、和尚の正体を分かったうえで読み返すとまたおもしろい。地味にこれが伏線か?と思われるところがある。

江西和尚も数奇な運命に導かれるようにして、ここハヤブサ地区の隋明寺の住職をするようになった。

もとは千葉の出身。そして姉は展子(のぶこ)。展子は江西家に引き取られた養子だった。

そのことは江西和尚がここハヤブサに来るまで知らなかった。江西和尚は血のつながってない姉(展子)のでどころをこのハヤブサ地区で調べていたのだ。

 

結局、展子は江西展子➡信岡展子➡山原展子となり、出元は山原本家だった。

 

実は太朗も江西和尚と同じことをしていた。

山原本家と関係のある誰かがオルビスと濃い関係にあるのではないかと推理したのだ。

なぜなら吉田夏夫宅の火事の焼け跡から拾ったオルビスのマリア像の抱く十字架が「山原家」の「家紋」とそっくりなのに気づいたからだ。

そしてそれが山原本家の家系図に「ある人物」が抜けていることに気付く。信岡の妹だ。展子。

結果的に太郎は信岡の妹「展子」をたどっているうちに、江西和尚と同じ「展子」の足跡を「逆向きに」たどることになる。

なぜなら展子をたどって千葉の江西和尚に辿り着いたから。そこですべてつながったのだ。

実は「展子」は江西和尚の姉であり、信岡町長の腹違いの妹でもあったのだ。

だから太郎の推理に江西和尚はうなずくシーンがいくつかある。地味に伏線とは気づきにくい。

 

郵便局長吉田夏夫が殺された放火事件の直後、江西和尚は自分の命が(オルビスに)狙われていると警察に相談に行っている。

おそらく江西は全てを知っていたのだ。

黒幕はオルビスだと・・・。そして名古屋へ避難した立木彩の正体も。

 

でも、どこでそれを知ったかが何回読み直しても分からんかった。江西和尚のセリフはとても意味深だ。謎すぎる。

 

一連の放火殺人の犯人かと思われた立木彩、江西和尚が二人とも「白」。だとすると真犯人はだれだ?

謎が謎を呼ぶ。気が付けばハヤブサ中オルビスの信者だらけ。太郎はオルビスにとって邪魔な存在。

太郎の命が危ない。

後で分かったことだけどオルビスの実行部隊が現行犯で捕まることになる。つまりは全て謎の新興宗教オルビス十字軍のしわざだったのだ。

 

展子(のぶこ)とは何もの? ここからマジネタバレです

展子はすでに亡くなっていた。

かつてオルビステラエ騎士団を立て直した中心人物。そのときはまともな宗教団体だった。

 

展子の死後オルビスは教団の方向性を見誤り、犯罪を犯す。

幹部たちは警察につかまり、実刑を受けた。

 

オルビスの残党たちは新たにオルビス十字軍を立ち上げた。

そのときに、亡き展子の弟を枢機卿としてたてまつった。それが江西和尚。

 

亡き展子の地元ハヤブサを地上げしてオルビスの聖地にでもしようとしてたのか。

ハヤブサの人々を次々入信させ、土地売却を断れば放火殺人をいとわない。

もはやカルト集団。

 

そしてオルビス十字軍の杉森総長はハヤブサ地区で見つけた立木彩を幹部に抜擢して、スパイとして太郎の情報をリークさせていたのだ。 

 

信岡町長はオルビスの実行部隊の一つ「タウンソーラー」と仲良かったが、果たしてどこまで知っていたのか。

展子が信岡の妹だったこともあるので気になるところである。しかし、信岡宅も放火もされているしでどこまでの仲だったのか。

江西和尚のいう「それまでの仲やったんやろう」というセリフが、今にして地味に伏線として効いてくる。深いセリフだ。江西和尚も果たしてどこまで知っていたのか。なぞだ。

  

立木彩は本当は悪い人じゃない

立木彩の過去がブラックすぎる。

雑用ばかりさせられて、自作ドラマストーリーは売れっ子ディレクターに持っていかれ。

盗作までされて夢がかなわず救いを求めていた立木彩の心の隙間に新興宗教のオルビステラエ騎士団が・・・。

 

オルビスでやっと自分の夢「映像クリエイター」がかなうという悲しさ。

そして犯罪に巻き込まれることに・・・。

覚醒した彩がオルビスから脱出してきたのがここハヤブサ地区。

にもかかわらず、彩はまたもやオルビステラエ騎士団実刑後、生き延びた残党「新オルビス十字軍の杉森総長」にみつかってしまう。そしてスパイさせられる。悲しすぎる運命。

だから、立木彩は最初からハヤブサでの動きが怪しかったのだ。

 

最後はオルビスを表切って、太郎に本当のことを打ち明けた。よかった。彩は悪者じゃなかったんだ。

とおもいきや・・・、その直後、太郎はオルビス実行部隊の銃弾に倒れてしまうんだなー。

 

主役やられるって・・・。

死ななかったけど。

 

最後は現行犯でオルビスの実行部隊は捕まりました。

立木彩も江西和尚も実刑は免れた。

 

最後に

という訳で、オルビスの実行部隊は現行犯で捕まった。

でも、立木彩とか江西和尚は実刑にならなかったので良かった。

 

この小説ではたくさんの人が死なないのでいいですね。

人の過去(闇)の部分もそれほど重く書いてないのが、ボクのメンタル的にも優しかったです。

 

ただ、後半の部分はもうちょっと「宮部みゆきさん」並に膨らましてほしかったなという気もします。そうすれば江西和尚とか信岡町長や、展子、立木彩への感情移入がもっと深かったかもしれません。

 

でも、主役を三間太郎と考えるとまぁそういうものかなとも思いましたけど。「宮部みゆきさん」ならもうあと2冊は膨らませてたかもしれないです。もっと重い小説になっていたかもしれませんけど。

 

ボクは小説の「闇」部分が重すぎずメンタル持っていかれなかったので助かりました。楽しめました。

 

最初は本当にのどかでよかったんだけどなぁ、いつの間にか小説にのめり込んでしまいました。ネタを知ってからは何べんも読み返してしまいました。読むたびに味わいが違う。おもしろかったです。

 

今回も当たりでした。

ごちそうさまでした。

 

今日も最後まで読んでくださいましてありがとうございます。

そんじゃぁ、またね。

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