模倣犯1~5巻 宮部みゆき 朗読/加藤将之

どうも、メケです。

「模倣犯」全巻読み切りました。

途中、又吉直樹さんの「火花」に浮気していました。

「火花」も良かったですよ。ナレーションは堤真一さんでした。このナレーションがまた良かった。のめり込んでしまいました。この話はまた次回レビューします。

 

なぜ途中で「火花」に浮気したか。

「模倣犯」途中で読むのがしんどくなったからです。なんでかな。それはたぶん、犠牲者がたくさん出てきたし、シュチュエーションがお化けの出そうな怖いシーンがたくさん続いていたからです。えぐいシーンとか、人の心理が暗い、重い。そういうシーンが多く、話の進展もイマイチ進まず、堂々巡り的な感じもあって「火花」に浮気してしまいました。

 

ま、でも又吉直樹さんの「火花」はいい気分転換になりました。

 

ということで「模倣犯」のレビューです。

 

1~5巻まででざっくりと最初のさわりだけお話ししよう

タイトル「模倣犯」は次々と模倣犯が出てくるようなストーリーではないです。

話の軸が2つあります。

一つは塚田真一の軸。もう一つは有馬義男の軸。

全巻を通して7割ぐらいは有馬義男側の軸を中心に話は進んでいく。塚田真一は自分家の一家強盗殺人事件の第一発見者であり、その唯一の生き残り。自分だけ生き残ったという自責の念に駆られている孤独な高校生。そんな彼が朝の散歩中に公園のゴミ箱から有馬義男の孫娘の「手首?」と共に「赤色のバッグ」を発見する。

正確には水野久美という塚田と同年代の女性が第一発見者。そのそばをたまたま通りがかった塚田真一が警察に通報した。彼女とはそこで知り合い、のちに付き合い始める。

塚田真一はその「赤いバッグ」が有馬義男の孫娘のものと知る。塚田真一の一家強盗殺人事件はその1年前に起こっている。未だ塚田真一は心の傷はいえてない。塚田真一はそういう気持ちのまま、同じ被害者の遺族である有馬義男側の連続誘拐事件にどんどん巻き込まれていくのであった。

 

 

誰がキーマン? 登場人物多し

この有馬義男側の連続誘拐事件について、とにかく犠牲者が多い。犯行グループが賢いのか、冷酷なのか、幼いのか、アホなのか。1巻から5巻までで、主犯者がだいぶんアホに成り下がっていったような感じのするストーリーでもあった。

 

フリーのルポライター前畑滋子、警視庁側の武上悦郎、その部下の篠崎警部補が並行してこの話に絡んでくる。

 

この事件には長寿庵という蕎麦屋のせがれ高井和明、その妹高井由美子が濃く絡んでくる。

幼馴染でいじめっ子の栗橋浩美は薬局やのせがれ。彼は非常に親ガチャな環境で育っている。

 

以上が主要な登場人物。

他にもキーマンになって登場する人物は色々いる。

 

もと刑事現建築家やその友人である武上悦郎刑事やその娘。部下の篠崎警部。

前畑滋子の契約先の前島編集長などなど。

 

そのほかにもそれぞれの登場人物の家族や工場の従業員。

ガソリンスタンドの従業員とその家族。

栗橋浩美の母親の入院先で同室だったおばちゃん(足立さん)やその印刷工場の従業員。

もうねいろんな人がキーになってて・・・。

めっちゃくちゃ登場人物多いから💦。

 

そして、小説を最後まで読み終わった後に??となる。あれはどうなった?これは?というように自分の中では事件解決への布石ととらえつつ読んでいた箇所があった。しかしそれらは全部は回収されていないような感じで釈然としない感じがあった。何となくハッピーエンドで目をくらまされたような、そんな感じのする小説でした。ハッピーエンドは望むところではあるのだけども。

 

自分の印象として、この連続誘拐事件の犯行グループのリーダー網川浩一は「承認欲求」がかなり強い。多分生い立ちは相当しんどい家庭環境だったんだろうなと思いながらこの小説を読み進めた。

しかし、この網川の生い立ち(家庭環境)は小説内で最後まで出てこなかった。結局はそこが事件を読み解くキーになっていたからだろう。小説の一番最後に網川の家庭状況に触れられていた。案の定壮絶な家庭状況だった。そして私の予想通り母を殺害し、網川のアジト(母親の別荘)に遺棄していた。

 

結構シリアスではあったけど、宮部みゆきさんの人物描写はとてもリアルで詳細で読んでいておもしろかったです。

 

話の構成

話の構成は立体的にできていておもしろかった。

 

①塚田真一の心情VS有馬義男の心情と堂々とした態度

②塚田真一をストーカーする樋口めぐみ(一家強盗殺人事件犯人の娘)の被害者意識VS暫定犯人とされる高井和明の妹高井由美子の被害者意識

②前畑滋子の警察寄りの事件のルポVS網川浩一の「もう一つの殺人」小説本

③武上悦郎上司VS篠崎警部と付き合い始めた武上の娘「のりこ」

④この世に存在することそのものの意味を考え続けた塚田真一VS網川浩一

⑤どこまでもお人よしの高井和彦VS心の影を持ついじめっ子栗橋浩美

⑥栗橋浩美の辛く恐ろしい過去VS居場所がなく自分の身は自分で守っていくしかった過去を持つ網川浩一

 

上の①~⑥の骨格がその時々に複雑に絡み合いながら、その人の心情が変わっていく。

この著者宮部みゆきさんの人物描写を十分堪能できました。

 

 

塚田真一が自分と同じ残された唯一の遺族である有馬義男(じいさん)の背中を見つつ、影響を受けながら、精神的に成長していく姿はとても頼もしく思えました。

塚田真一は一家強盗殺人事件の主犯の娘樋口めぐみにストーカされて、住処を転々と逃げるように暮らしていたが、話の最後の方ではきちんと樋口めぐみに向き合っていた。良かったと思う。有馬のじいさん影響力あり。スゴシ。

 

水野久美(塚田真一の彼女、公園で手首を発見した時に知り合った)と塚田真一と有馬義男の三人でほのぼのするシーンが印象的だった。

シリアスな場面が多かったので唯一ほっとできたシーンだった。 

 

死ななくてもよかったんじゃねぇ?って人もいた!

蕎麦屋長寿庵のせがれ高井和明は自車を栗原浩美に運転させ同乗していた。

グリーンロードの山道のカーブ付近で錯乱状態になった栗橋浩美が運転を誤り、ガードレールを突き破り車はがけ下へ真っ逆さま。

この二人の死は謎が謎を呼んで、読んでておもしろかった。

しかもトランクルームには男性の遺体を積んでいた。

憶測が憶測を呼んでいろんな事件トラブルが沸き起こる。

僕はワクワクしながら読んだ。ここ一番おもしろかったよ。

 

高井和明の妹由美子ものちにホテル10階から飛び降りて死んだ。

妹由美子は死ななくてよかったんじゃないかなって思った。

 

なぜなら、生きてた方がもっとストーリーは複雑になっておもしろかったんじゃないかなって・・・・。

高井由美子が死ぬという想定外の事件が起こることによって網川は都度自分の描いたストーリーを書き換えないといけなくなり、その結果、ボロが出て嘘を上手く突き通せなくなっていったような。

途中からなんとなしにこの小説が読め始めたというか、聞く(読む)ペースがどんどん早くなっていきました。

 

すなわちあれだけ計算だかくてかしこかった網川が、終盤はマジでアホに見えてきてた。最後は脅しにもならず自慢の屁理屈も負け犬の遠吠え状態だった。まさに有馬のじいさんの言うところの「人でなし」状態。

「正直に生きていれば迷っても必ず道はつながってくる」と言っていた、あの有馬のじいさんは「どんだけの人格者なんじゃ」とまで最後の方は思っていしまいました。

 

僕ならこういうストーリーもありかな?

途中、グリーンロードで事故った時に捜索しても出てこなかった栗橋浩美の携帯電話を地元の人が拾っていた。その辺をもうちょっと膨らましてほしかったな。あの携帯電話がテレビ中継でさらされて網川を追い詰めるとか。 最後までこの布石(携帯電話)は回収されなかった(話の本線に再登場しなかった)。

 

栗橋浩美の声紋判定は本人と合致したのに、共犯者と推定されていた高井和明の声紋との照合に決め手がなく捜査が右往左往していたけど、声紋判定できるのなら、テレビ出演し始めた網川を声紋判定できたんじゃないかとか。 

 

前畑滋子はせっかく網川のアジトを見つけたのに、HBSの報道番組に出演していた網川にもっと詰めよればよかったのに。警察にアジトのこと口止めされていて前畑滋子は何も言えない状況だった。それであのアメリカの小説「模倣犯」を持ってくるのが今一つ腑に落ちない。無理くり「模倣犯」で落としたようなそんな印象を受けた。

 

高井和明の声紋判定できないって、そんなバブルの(1990年代)頃はまだまだポケベル、留守番電話の時代。誰かしらの家の留守電に高井和明の声が残ってなかったんだろうか。

とかいろいろ思うのである。

 

あともう一つ、有馬義男は豆腐屋の主。彼は頭の回転がよく、度胸もありキレモノじいさん。豆腐屋店主はもったいない。刑事として登場してほしかった。要所要所で塚田真一に何ともほれぼれするような「いいアドバイス」をしている。彼の影響を受け、次第に塚田真一が明るくなっていった。それがよかった。個人的感想でした。

 

まとめ

最後ら辺は若干首をかしげそうなところもあったけど、総じておもしろかったです。

有馬義男は格好いいじいさんでした。

煮え切らない塚田真一にはちょいちょいイラつかされましたけど。

 

なんにせよ、私は宮部みゆきさんの人物描写が好きでこの小説を読んでいたので、それに尽きます。

良かったです。

 

しかしながら、本小説のようなシリアスで、メンタルの重くなる小説はもういいかなとは思いました。

自分の心まで重くなる。

 

それとあともう一つ。この小説が今から30年ほど前に書かれたものだからなのか、タバコをふかすシーンが多かったです。タバコの吸い方でその人物の心情を表現している箇所がたくさんありました。あの頃は「タバコ文化」の時代だったんだなーと思いました。

酒を飲んでるシーンも出てきてました。ここもやはり、耐えられないほどの悲しみ辛さを紛らわすときに酒をあおるシーンがありました。時代だなーって思いました。

 

次の本何読もうか楽しみです。

 

いつも最後まで読んでくださいましてありがとうございます。

 

それではまたね。

 

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